腰痛診療のポイント
point
1整形外科専門医による「診断」
的確な「治療」のためには、病気や病状の「診断」が必要です。まずは整形外科専門医による「診断」を受けましょう。
2整形外科専門医と理学療法士による「治療」
治療には色々な選択肢があります。医師による処方や注射、理学療法士によるリハビリテーション、コルセット、電気治療や牽引などです。
理学療法士は国家資格を持ったカラダを診るプロです。医師による治療の設計のもと、理学療法士が患者さんそれぞれの問題点を明らかにしつつ、治療にあたります。特に、長引く傾向にある腰痛に対してはリハビリテーションが重要となります。
整形外科専門医による診断
diagnosis
整形外科では医師による「診断」を行います。まず、心配のない「いわゆる腰痛」かどうかを見極めます。
Red flag(危険信号)=特異的腰痛
「いわゆる腰痛」として経過をみてはダメな腰痛です。「特異的腰痛」といいます。
骨折・腫瘍・感染などが疑われる場合です。年齢、痛む場所、痛むタイミング、元々お持ちのご病気、発熱、体重、神経症状などの「サイン」(red flag sign)があります。この「サイン」に加え、患者さんの痛がり方、表情、診察室に入ってくる様子などと、臨床の現場で培った経験も加えて判断します。
「診断」が無く、整骨院などの治療院で「治療」のみを受けられている場合も多くあります。その場合は、「サイン」が見過ごされていることもあります。「特異的腰痛」を“いわゆる腰痛”として治療を受けていては危険です。まずは整形外科専門医による「診断」を受けましょう。
Green flag(青信号)=いわゆる腰痛
「いわゆる腰痛」です。心配する病態の無い状態なので、green light(青信号)です。「非特異的腰痛」といいます。
“いわゆる腰痛”は人類の定めのような腰痛です。人類が四足歩行から直立二足歩行に進化したことにより、頭部・上半身を腰で支えることを強いられたために生じる病態です。
これは全腰痛の大半(約85%)であり、画像診断や診察などで原因を特定できない、あるいは特定しにくい状態です。「ぎっくり腰」もここに含まれます。原因としては、筋・筋膜性、椎間板性、椎間関節性、神経根性などがあります。
当院のコンセプトは
「共に考え、共に治す」です。
これらの病状を
患者さんに理解して頂き、
共に治療方針を考えます。
整形外科専門医と理学療法士による治療
treatment
治療目標
整形外科における腰痛治療において、次の2点の達成を目標とします。
1痛みの軽減の達成
痛みの軽減を達成します。生活・仕事・趣味などの各場面において痛みのでない状態を目指します。薬、注射、装具療法(コルセットなど)、物理療法(電気治療など)がここに含まれます。
2身体の機能の回復と向上
身体の機能の回復と向上を達成します。これはそれぞれの患者さんによって目指すものが変わります。歩く、仕事をする、家事をするなど、基本的な動作能力の回復・向上を目指します。スポーツ愛好家であれば、ケガの治療だけでなく、予防やパフォーマンスの向上を目指します。リハビリテーションにより、これらを達成します。
治療の基本
薬
+
リハビリテーション
「薬で様子をみましょう」でも、いったんは解決することが多いでしょう。
しかし、約60%の患者さんは再び腰痛を発症すると言われています。痛いというのは、体に問題が起こっていることの体からのメッセージです。ですから、痛み止めで痛いというメッセージが止まれば良いということは基本的にはありえないのです。
体に問題が起こっているとはどのようなことなのか。それはこのような図で示すことができます。
体からのメッセージを詳しく解析して治療にあたるのが理学療法士です。理学療法士が行うリハビリテーションによって、より根本的な治療を目指します。長引いている(慢性化している)腰痛に関しては特にリハビリテーションが重要です。
各治療について
薬
およそ3段階の強さの各種鎮痛剤が中心となります。慢性腰痛専用の薬もあります。
その他に、筋肉の緊張をやわらげる薬、外用薬(貼り薬や塗り薬)なども組み合わせます。
当院では漢方薬を組み合わせる場合もあります。
リハビリテーション
リハビリの語源は「本来あるべき状態への回復」です。患者さんの身体特性を評価し、低下している身体機能の改善を目指します。姿勢・動き方・筋力・筋持久力・柔軟性・関節の動き・各関節の連動性などの観点から治療を行います。
注射
主にトリガーポイントブロック注射や静脈注射です。エコーを用いたハイドロリリースを試みる場合もあります。トリガーポイントとは筋肉が部分的に凝り固まったところで、強く押すと痛みがでます。トリガーポイント注射は、そのポイントに局所麻酔薬をかけて痛みをとる方法です。静脈注射は鎮痛剤等を投与します。鎮痛剤に限らず、薬は内服よりも注射の方が効率が良いです。
物理療法
電気治療や牽引治療です。電気治療は主に温熱療法で、局所の循環や代謝の亢進により、痛み物質の排除が期待できます。牽引療法では、筋肉の緊張をやわらげる効果や、組織の柔軟性改善が期待できます。
装具療法
主にコルセットです。
特に急な腰痛に有効です。腰を安定化させることで腰痛軽減効果が期待できます。しかし、漫然とした使用は、腰を安定化させる筋肉が萎縮する可能性があり注意が必要です。