お電話が混み合う場合がございます。
お電話を頂く前に下記の
よくあるご質問をご確認ください。

業者の方はこちら

よくあるご質問はこちら

上記で解決できない場合は
お電話くださいませ

048-649-0789

ヒアルロン酸注射の効能と適応について

2026.03.29

はじめに

「膝が痛くて歩くのがつらい」「肩が上がらない」——こうした関節の痛みを抱える方にとって、「ヒアルロン酸注射」という治療法を耳にされたことがあるかもしれません。ヒアルロン酸注射は、整形外科における代表的な保存療法(手術をしない治療)のひとつですが、「どんな仕組みで効くのか」「どんな病気に使えるのか」について正しく理解されていないことも少なくありません。本記事では、ヒアルロン酸注射の効能とそのメカニズム、適応についてわかりやすくご説明します。

関節の中のヒアルロン酸とは

私たちの関節の内側は「関節腔」と呼ばれる空間になっており、その中は「滑液(かつえき)」という液体で満たされています。滑液の主要成分のひとつがヒアルロン酸です。ヒアルロン酸は高い保水性と粘弾性(ねばりと弾力の性質)を持ち、関節の「潤滑油」「クッション」として働いています。

しかし変形性関節症などの病態が進行すると、関節内で本来産生されるヒアルロン酸が分解・減少し、粘弾性が低下します。その結果、関節軟骨への摩擦・衝撃が増大し、痛みや炎症の悪化につながります。関節内へのヒアルロン酸注射(関節内注射)は、この不足したヒアルロン酸を補充し、関節環境を整えることを目的とした治療です。

ヒアルロン酸注射の主な効能と作用メカニズム

ヒアルロン酸注射の効能は、単なる「潤滑補充」にとどまらず、近年の研究によって複数の生物学的作用が明らかになっています。主な作用として、以下の3つが挙げられます。

1:関節のクッション・潤滑機能を取り戻す

関節内に注入されたヒアルロン酸は、減少していた滑液のとろみと弾力を補います。これにより、歩いたり体を動かしたりしたときに関節にかかる衝撃をやわらげ、軟骨へのダメージを減らすことができます。また、関節の表面同士がなめらかに動くよう、潤滑油のような働きも果たします。いわば「関節のクッションと油の補充」が、ヒアルロン酸注射の最も基本的な役割です。

2:軟骨を守る働き

近年の研究では、ヒアルロン酸がクッションの役割にとどまらず、軟骨そのものを守る働きもあることがわかっています。

関節内に注入されたヒアルロン酸は、軟骨細胞や関節の内側を覆う細胞に働きかけ、軟骨を「溶かす・壊す」酵素の産生を抑えます。変形性関節症では、こうした分解酵素が過剰に作られて軟骨の破壊が進みますが、ヒアルロン酸はその流れにブレーキをかけてくれます。

さらに、軟骨の主な材料であるコラーゲンや、軟骨に弾力をもたらす成分の合成を促す作用も報告されています。つまり、ヒアルロン酸は軟骨の「壊れるスピードをゆるめ、作られるスピードを高める」両方向から軟骨を守ると考えられています。

ただし、一度すり減った軟骨が完全に元に戻るわけではありません。あくまでも「これ以上壊れにくくする」保護の治療として理解していただくことが大切です。

3:炎症と痛みをしずめる働き

変形性関節症では、関節の内側を覆う「滑膜(かつまく)」という薄い組織に慢性的な炎症が起きています。炎症が続くと「炎症を引き起こす物質」が関節内で増え続け、痛みの悪化だけでなく軟骨の破壊をさらに進めてしまいます。

ヒアルロン酸を注入すると、この炎症を引き起こす物質の産生を抑える働きがあることが研究で確認されています。炎症の「火元」を小さくすることで、腫れや痛みをやわらげ、軟骨がさらに傷つくのを防ぐ方向に作用します。

また、ヒアルロン酸は関節内の痛みを感じる神経にも直接働きかけ、痛みの信号を和らげる作用も報告されています。こうした複数の経路を通じた鎮痛効果が、ヒアルロン酸注射が「よく効く」と感じられる理由のひとつと考えられています。

ヒアルロン酸注射の対象となる主な疾患(適応)

日本において、ヒアルロン酸注射(ヒアルロン酸ナトリウム製剤の関節内注射)は、以下の疾患に対して健康保険が適用されています。

まず、変形性膝関節症が最も一般的な適応です。特に初期から中等度の段階で効果が出やすいとされており、国内外の診療ガイドラインでも疼痛緩和・関節機能改善を目的とした治療選択肢として位置づけられています。日本整形外科学会の「変形性膝関節症診療ガイドライン2023」でも、ヒアルロン酸関節内注射は保存療法の重要な一手段として記載されています。

次に、肩関節周囲炎(いわゆる四十肩・五十肩)も保険適用の対象です。肩関節の滑膜炎や拘縮に対して、ヒアルロン酸の潤滑・抗炎症作用が痛みの緩和と可動域の改善に寄与すると考えられています。

さらに、関節リウマチにおける膝関節痛も適応に含まれます。ただし、関節の器質的変化が高度な場合には有効性・安全性が確立されていないため、使用には慎重な判断が必要です。

なお、股関節の変形性関節症については一部の製剤に保険適用が拡大されており、今後も対象疾患の見直しが続く可能性があります。膝・肩以外の関節(足関節、手指関節など)については、自由診療として実施しているクリニックもありますが、適応については担当医にご相談ください。

治療効果の持続期間と通院について

ヒアルロン酸注射の効果の持続期間には個人差がありますが、一般的には1回の注射シリーズ(通常1週間おきに5回程度)で数週間から数ヶ月程度、痛みや関節機能の改善が期待されます。臨床研究では3〜12ヶ月の効果持続が報告されています。症状が安定した後は、2〜4週間に1回程度の維持注射で症状をコントロールしていくことが多いです。

ただし、ヒアルロン酸注射によって一度すり減った軟骨が元どおりに再生されるわけではありません。あくまでも痛みや炎症を軽減し、残存する関節機能を保護・維持する治療であることをご理解ください。

さいごに

ヒアルロン酸注射は、①関節クッション機能の回復、②軟骨保護作用、③抗炎症・鎮痛効果という複合的なメカニズムを持つ、科学的根拠に基づいた整形外科的保存療法です。変形性膝関節症・肩関節周囲炎・関節リウマチの膝関節痛などを対象に、健康保険の適用で受けることができます。

「膝や肩の痛みが気になる」「以前より関節が動かしにくくなった」と感じる方は、まずは整形外科専門医へのご相談をお勧めします。個々の病状・進行度・生活背景に合わせた治療方針を一緒に考えてまいります。

当院では患者さんひとりひとりの状態を丁寧に評価したうえで、ヒアルロン酸注射を含む適切な保存療法をご提案しております。お気軽にご来院・ご相談ください。

文責:谷口整形外科リハビリクリニック 院長 谷口真史

予約