温めるの?冷やすの?〜正しいセルフケアの見分け方〜
2026.03.13

「先生、痛いときは温めたほうがいいの? それとも冷やしたほうがいいの?」
外来で診察をしていると、患者さんからとてもよくいただくご質問です。
間違った対処をしてしまうと、かえって痛みが長引いてしまうこともあります。今回は、ご自宅で判断するための「温める・冷やす」の基準と、意外と知られていない「湿布(シップ)」の真実について分かりやすく解説します。
❄️冷やすべきケース(急性期)
基本的には、「急なケガ」や「強い炎症」がある場合は冷やします。受傷直後から約48時間(2日間)程度が目安です。
こんな時は「冷やす」
- 骨折、捻挫、打撲などのケガをした直後
- 患部が赤くなって熱を持っているとき
- 腫れがあり、ズキズキとした痛みがあるとき

冷やす理由
冷やすことで血管が収縮し、内出血や腫れを最小限に抑えることができます。また、炎症の広がりを防ぎ、知覚神経を麻痺させることで痛みの感覚を鈍らせる効果(鎮痛効果)があります。
正しい冷やし方
保冷剤や氷を直接肌に当てると凍傷になる恐れがあります。必ずタオルや手ぬぐいで包んでから患部に当ててください。
1回あたり15〜20分程度を目安に行いましょう。⚠️ 注意点:感染による腫れ
ケガではなく、バイ菌が入ったことによる「化膿(かのう)」で赤く腫れている場合は、冷やすだけでは治りません。抗生物質などによる治療が必要ですので、速やかに受診してください。
♨️温めるべきケース(慢性期)
強い炎症が治まった後や、長期間続いている痛みに対しては、温めることが効果的です。
こんな時は「温める」
- 慢性的な腰痛、膝の痛み
- 肩こり、首のコリ
- 神経痛
- 筋肉がこわばっている、張っている感じがするとき
温める理由
温めると血管が拡張し、血行が良くなります。血液の流れが良くなると、痛みの原因となる物質(発痛物質)や老廃物が流されやすくなります。また、温熱効果で筋肉の緊張がほぐれ、柔軟性が高まることで痛みが緩和されます。
正しい温め方
お風呂(入浴)で全身をゆっくり温めるのが最も効果的です。局所的にはホットパックやカイロ、温かい蒸しタオルなども有効です。
※ただし、まだ赤く腫れている時期(急性期)に温めると、血流が良くなりすぎて炎症が悪化し、痛みが強くなることがあるので注意が必要です。
💊湿布薬(シップ)の真実
「温湿布(ホット)と冷湿布(クール)、どっちを貼ればいいですか?」という質問もよく受けますが、実は医学的には「どちらでも大きな違いはない」のです。
温感・冷感の仕組み
♨️ 温感シップ(ホット)
カプサイシン(トウガラシ成分)が含まれており、皮膚が刺激されてピリピリと温かく「感じる」ようになっています。
❄️ 冷感シップ(クール)
メントールなどが含まれており、スーッとして冷たく「感じる」ようになっています。水分を含んでいるため貼った直後はわずかに冷えますが、冷却効果は持続しません。
ここがポイント!
シップは「貼る痛み止め」です。
温感も冷感も、消炎鎮痛成分(インドメタシンやジクロフェナクなど)が皮膚から吸収されて痛みを和らげるという薬の効果は同じです。
シップ自体には、患部を深く温めたり、しっかり冷やしたりする物理的な効果はほとんどありません。
どう使い分ければいいの?
基本的には「ご自身が貼って気持ち良いほう」を選んでいただいて構いません。
ただし、温感シップはカプサイシンの刺激が強いため、入浴直前・直後に貼るとヒリヒリ痛むことがあります。また、皮膚が弱い方はかぶれやすいので注意してください。
「本当に温めたい」場合はお風呂やカイロを使い、「本当に冷やしたい」場合は氷や保冷剤を使うのが正解です。シップはあくまで「痛み止めの薬」として補助的に使いましょう。
まとめ
これまでの内容を簡単にまとめます。
- ケガ直後・腫れている・熱がある(急性期)
→ 氷や保冷剤で冷やす - 慢性的な痛み・コリ・こわばり(慢性期)
→ お風呂などで温める - シップの選び方
→ 温感・冷感はお好みで(効果は同じ)。物理的に温めたり冷やしたりするのは別の方法で。
痛みでお困りの方へ
「冷やすべきか温めるべきか判断がつかない」「セルフケアをしていても痛みが引かない」という場合は、無理をせず専門医にご相談ください。
当院では、患者さん一人ひとりの症状に合わせた適切な治療とリハビリテーションを提案いたします。
どうぞお気軽にご相談ください。
文責 谷口整形外科リハビリクリニック 院長 谷口真史
