膝・股関節・腰・首が「パキパキ」鳴るのはなぜ?整形外科医が原因と受診の目安をわかりやすく解説
2026.05.13

「朝起き上がるとき、膝がパキッと鳴る」「首を動かすとゴリゴリ音がする」「股関節がバキッと鳴って驚いた」――こんなご経験はありませんか?
整形外科の外来でも、「関節の音が気になって…」というご相談はとても多くいただきます。音が出るたびに「何か壊れているのでは?」と不安になる方も少なくありません。
この記事では、膝・股関節・腰・首といった部位ごとに、音が鳴る原因をわかりやすくご説明します。「今すぐ受診が必要なサイン」と「あまり心配しなくてよいケース」の見分け方もお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
関節が鳴る原因は、大きく3つあります
① 関節内の「キャビテーション」(気体の空洞ができる現象)
いわゆる「パキッ」「ポキッ」という音の代表的な原因です。
関節の内部には「関節液」という潤滑液が満たされています。関節を素早く動かしたり引き伸ばしたりすると、関節内の圧力が一瞬変化し、関節液の中に小さな気体の空洞が形成される瞬間に音が鳴ると考えられています。
このタイプの音の特徴として、「一度鳴ると、しばらく同じ関節では鳴りにくくなる」という「不応期」があります。これは、関節内の圧や気体の状態が元に戻るまでに時間がかかるためと考えられています。
② 腱・靱帯などが骨の出っ張りを乗り越える音(スナッピング)
「引っかかってバキッとなる」「一定の角度で毎回鳴る」という訴えに多いのが、このタイプです。
腱(筋肉と骨をつなぐ組織)や靱帯(骨と骨をつなぐ組織)が、骨の出っ張りや関節の周囲にある構造物を乗り越えるときに音や弾発感が生じます。特に股関節ではこのタイプが非常に多く、「弾発股(だんぱつこ)」または「スナッピングヒップ症候群」と呼ばれています。
③ 軟骨・骨棘・関節面の摩擦による音
「ゴリゴリ」「ジャリジャリ」「ザラザラ」という感じの音です。
関節の軟骨がすり減ったり、関節面が滑らかでなくなったりすると、動くたびに摩擦音として感じられます。変形性関節症でよくみられるタイプの音です。

部位別に解説します
○膝の「パキパキ」「ゴリゴリ」
膝の音には、複数の原因が混在することがあります。
屈伸や立ち上がりの際の「パキッ」は、関節内でキャビテーションが起きている可能性があります。また、膝のお皿(膝蓋骨)と太ももの骨(大腿骨)の間の軟骨がすり減ったり滑走がうまくいかなかったりすると、「ゴリゴリ」「パキパキ」という音が繰り返し出やすくなります。変形性膝関節症でよく見られるパターンです。
こんな症状があれば整形外科へ:
音とともに膝が痛い
膝が腫れている、熱感がある、水がたまっている感じがする
動かすと膝が「引っかかる」「ロックされる」感覚がある
膝が突然崩れるような感じ(膝崩れ)がある
外傷(ケガ)の後から音が出るようになった
動きの範囲が狭くなってきた
○股関節の「バキッ」「コクッ」
股関節の音には、特に腱が骨の出っ張りを乗り越えるタイプが多く見られます。
・大転子の外側で鳴る場合(外側型):
腸脛靱帯や大殿筋の前端が、太ももの付け根の骨の出っ張り(大転子)を乗り越えるときに「バキッ」「ゴリッ」と鳴ります。歩行中・立ち上がり・階段の昇降で再現されることが多いです。
・鼠径部(足の付け根)で鳴る場合(内側型):
腸腰筋という深部の筋肉の腱が、太ももの骨や周囲の骨の出っ張りを越えるときに「コクッ」「バキッ」と鳴ります。これを「内側型スナッピングヒップ(内側型弾発股)」と呼びます。
・関節の中に原因がある場合(関節内型):
頻度は低いですが、股関節の軟骨損傷・関節唇(かんせつしん)損傷・遊離体などでも「クリック感」「引っかかり感」が生じることがあります。
こんな症状があれば整形外科へ:
音とともに鼠径部(足の付け根)や股関節に痛みがある
深く曲げたり内側にひねったりすると痛い
外傷の後から急に音や痛みが出た
スポーツや運動中に痛みが出る
○腰の「ボキッ」「ゴリゴリ」
腰の音も、背骨の小さな関節(椎間関節)や骨盤と背骨のつなぎ目(仙腸関節)でのキャビテーション、または周囲の靱帯・筋肉・筋膜が動くときの音が主な原因です。
寝返りやストレッチ、腰をひねったときに「ボキッ」と鳴る場合は、これらの関節で気体の空洞が生じている可能性があります。腰を動かすたびに「ゴリゴリ」「ミシミシ」と繰り返し鳴る場合は、椎間関節の変性や靱帯・筋膜の滑走に問題がある可能性があります。
なお、「音が鳴るとスッキリする」と感じる方もいますが、腰の音が鳴ること自体が骨のずれを直している、神経が改善しているという意味ではありません。
こんな症状があれば整形外科へ:
足(下肢)に痛みやしびれがある
足の力が入りにくい
歩きにくくなってきた
排尿・排便に違和感がある
急に強い腰痛が出た
発熱を伴う腰痛
骨粗しょう症のある方が急に腰背部痛を感じた
○首の「パキパキ」「ゴリゴリ」
首の音も、頚椎にある小さな関節(椎間関節)でのキャビテーション、または椎間関節や周囲の靱帯・筋肉・筋膜が動くときの滑走音が主な原因です。
頚椎症(加齢による首の骨や軟骨の変性)が進んでいると、「ゴリゴリ」「ジャリジャリ」というタイプの音が出やすくなります。
なお、自分で首を強くひねって「鳴らす」習慣を持つ方がいますが、音が鳴ること自体が骨を「元に戻している」わけではありません。強くひねる必要はなく、むしろ過度な操作には注意が必要です。
こんな症状があれば整形外科へ:
腕や手にしびれや痛みが放散する
腕の力が入りにくい
細かい作業(ボタンの留め外しなど)がしにくくなった
歩き方がおかしいと感じる、足がもつれる
めまいやふらつきを伴う
外傷後に首の強い痛みと音が出た
発熱や原因不明の炎症を疑う症状がある
まとめ:音だけで心配しすぎないで。でも「音+症状」は要チェック
関節から音が出ること自体は、必ずしも深刻な病気のサインではありません。
○あまり心配しなくてよいケース(目安):
音はするが、痛みがない
腫れや熱感がない
動きの範囲は普通
たまに鳴る程度で、その後は普通に使える
○整形外科への受診をおすすめするケース:
音と同時に痛みがある
関節が腫れている、熱感がある
ケガの後から急に音が出るようになった
引っかかり感・ロック感・膝崩れがある
しびれや脱力を伴う
動かせる範囲が狭くなってきた
音そのものをゼロにすることよりも、「痛みがないか」「腫れていないか」「動きが悪くなっていないか」を確認することの方が大切です。
少しでも不安なことがあれば、お気軽に当院へご相談ください。
文責 谷口整形外科リハビリクリニック 院長 谷口真史
