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ピラティスは本当に効く?整形外科医がエビデンスをもとに解説

2026.08.24

「腰痛にピラティスがいいと聞いたけど、本当なの?」「膝が痛いけど、運動はしたほうがいいのかな」——診察室でも、こうした質問をいただくことが増えてきました。

谷口整形外科リハビリクリニックでは、2026年8月より、院内(2階)で理学療法士監修の少人数制グループピラティスを試験的に始めています。今回は「整形外科医としてピラティスをどう見ているか」を、研究データをもとにわかりやすくご紹介します。

ピラティスとはどんな運動?

ピラティスは、呼吸・姿勢・体幹(お腹まわりや背骨を支える筋肉)の使い方を意識しながら、ゆっくりとした動きで身体をコントロールする運動です。

筋トレのように「筋肉に負荷をかけて鍛える」ことだけが目的ではなく、

  • 姿勢をどう保つか
  • 呼吸をどう使うか
  • 身体をどう動かすか

といった「動きの質」を練習していく点が特徴です。

もともとは、第一次世界大戦中にイギリスの収容所に抑留されていたジョセフ・ピラティス氏が、病気やけがで身体を動かせない仲間の抑留者(のちには負傷した兵士たち)のために考案した運動法がルーツとされています。ベッドのスプリングを利用し、寝たままでも身体を動かせる器具を工夫したことが、現在のピラティス専用マシン「リフォーマー」の原型になったといわれています。

戦後、ニューヨークでスタジオを開いたことをきっかけに、けがのリハビリやコンディショニングとしてダンサーたちの間に広まり、今日のダンス界との深いつながりにつながりました。もともと「身体を動かせない人が、身体の使い方を丁寧に学び直す」という発想から生まれた運動法という意味で、リハビリテーションの考え方と重なる部分が多くあります。

整形外科的にみて、ピラティスにはどんな根拠があるの?

ここからは、「ピラティスは本当に効果があるのか」について、科学的な研究をもとに、良い面も限界も含めて正直にお伝えします。

慢性腰痛への効果 ―― 現時点でもっとも研究が積み重ねられている分野

ピラティスの効果として、もっとも多くの研究が行われているのが「慢性的な腰痛(3か月以上続く、はっきりとした原因がわからないタイプの腰痛)」です。

2023年に発表された、無作為化比較試験(治療の効果を科学的に検証する研究デザイン)19件・合計1,108人を対象としたメタ分析では、ピラティスを行ったグループで、痛みの程度や、日常生活の動作のしやすさを示す指標(ODI、Roland-Morris Disability Questionnaireなど)に改善がみられたことが報告されています。同様の傾向を示す系統的レビュー・メタ分析は、その後2024年にも発表されています。

一方で、大切な注意点もあります。ピラティスと他の運動療法(体幹トレーニングや一般的な運動プログラムなど)を直接比較した研究では、痛みの改善効果に明確な差が出なかったとする報告もあります。つまり、

「ピラティスは腰痛に対して効果が期待できる」とは言えますが、「他の運動療法より圧倒的に優れている」とまでは、現時点の研究では証明されていません。

これは、世界保健機関(WHO)が2023年に発表した慢性腰痛のガイドラインの考え方とも一致します。WHOは、個々の患者さんの身体的・心理的・社会的な背景に合わせて内容を調整した(個別化した)、専門職による監督下での運動プログラムを推奨しており、特定の運動種目だけを特別扱いしているわけではありません。イギリスのNICE(国立医療技術評価機構)のガイドラインでも、体幹トレーニングや有酸素運動、呼吸法を取り入れた運動(mind-body exercise)などを組み合わせたグループ運動を、本人の希望や能力に合わせて選ぶことが勧められています。

つまり、腰痛においてもっとも大切なのは「運動を続けること」そのものであり、ピラティスはその続けやすい選択肢のひとつ、というのが医学的に誠実な表現だと考えています。

変形性膝関節症への効果 ―― 有望だが、まだ発展途上

膝の軟骨がすり減ることで痛みや動かしにくさが出る「変形性膝関節症」についても、ピラティスの研究が進んでいます。

2025年に発表されたメタ分析(8件のRCT・322人が対象)では、運動を行わなかったグループと比べて、ピラティスを行ったグループで痛みや機能を示すWOMACスコアの改善が報告されました。ただし、一般的な運動療法と比較した場合には、痛みやWOMACスコアにはっきりとした優劣は確認されておらず、研究全体の信頼性も「低い〜非常に低い」と評価されています。

別の2025年のレビュー(11研究・476人)では、

  • 運動をしないグループと比べると痛みの改善がみられた
  • 一般的な運動療法と比べると、痛みについては明確な差がなかった
  • 関節の動く範囲(可動域)については、ピラティスのほうが良好な結果だった

と報告されています。

まとめると、変形性膝関節症に対しても「ピラティスは有望な選択肢のひとつ」とは言えますが、「通常の筋力トレーニングなどより優れている」と証明されているわけではない、というのが現時点で誠実な結論です。

なぜ、体幹や姿勢へのアプローチが有効だと考えられているのか

腰や膝の痛みには、筋力の低下だけでなく、

  • 姿勢のクセ
  • 体幹の支える力(インナーマッスルを含む)
  • 身体をどう動かすかという運動のコントロール

など、さまざまな要素が関わっています。ピラティスは、こうした要素を組み合わせて練習できる点が特徴です。ただし、「なぜ効果が出るのか」という仕組み(メカニズム)についての研究は、「痛みが改善するかどうか」を調べた研究ほどはまだ確立されていません。そのため、「インナーマッスルを鍛えるから腰痛が治る」と単純に言い切ることは避け、「身体を支える力と、身体の動かし方の両方を練習できる運動」とお伝えするのが適切だと考えています。

なぜ、理学療法士が指導するのか

当院がこだわっているのは、「ピラティスそのもの」以上に、「誰が、どのように指導するか」という点です。

理学療法士は、「理学療法士及び作業療法士法」で定められた国家資格で、日本理学療法士協会では「動作の専門家」と説明されています。ここでは、理学療法士が指導することの意味を、5つの観点からご紹介します。

① 身体を評価してから、運動の内容を選べる

慢性腰痛を対象とした2022年のシステマティックレビュー・メタ分析(58研究・10,084人)では、一人ひとりの身体の状態に合わせて内容を調整した「個別化された運動療法」は、画一的な運動プログラムと比べて、痛みや動作のしやすさをわずかに上回って改善させる可能性が報告されています。

日本理学療法士協会も、理学療法士について、身体能力・基本動作・生活環境などを評価したうえで、目標に応じたプログラムを作成する専門職だと説明しています。同じ「ピラティス」というメニューでも、その人の身体に合わせて内容を選べるかどうかは、効果や続けやすさに関わってくると考えられます。

② 「なぜ、うまく動けないのか」を評価できる

たとえば同じ「前屈が硬い」という方でも、その理由は、股関節の硬さ・太もも裏の筋肉(ハムストリングス)の硬さ・背骨の動き・痛みなど、一人ひとり異なります。「スクワットがつらい」「片脚立ちが不安定」といったお悩みも同様です。

理学療法は法律上、「基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行わせる」ことと定義されています。単に動きを教えるだけでなく、「なぜその動きが難しいのか」を評価したうえで運動を調整できることが、理学療法士による指導の特徴です。

③ 「今、この運動をしてよいか」を判断できる

理学療法士は、筋肉や関節だけでなく、痛みの性質・神経学的な所見・全身状態なども含めて評価する教育を受けています。もちろん、スタジオでのレッスン中に「診断」を行うわけではありません。しかし、「通常の運動として進めてよいか」「一度、医療機関で確認したほうがよいか」を判断できる知識を持っていることは、一般的なフィットネスサービスとの大きな違いです。

当院は整形外科クリニックに併設しているため、気になる症状があれば、レッスンの中だけで完結せず、必要に応じて診察へつなげることができます。

④ 少人数だからこそ、一人ひとりに合わせて調整できる

同じ「ピラティス」のクラスでも、参加される方の状態はさまざまです。たとえば、

  • 腰痛があるので、まずは呼吸や骨盤の動かし方から始めたい方
  • 運動習慣があり、少し負荷を上げたい方
  • 膝に変形性膝関節症があり、深く曲げる動きは避けたい方
  • バランス能力を改善したい方

このように、同じクラスの中でも、動きの大きさや負荷を一人ひとり調整する必要があります。当院のグループレッスンを定員4名としているのは、理学療法士が参加者一人ひとりの動きを確認しながら、その場で調整できるようにするためです。

⑤ 正しいフォームで、継続できる

実は、運動療法において非常に重要なのが「継続すること」です。筋骨格系の症状に対する運動療法を対象とした2023年のレビュー(321試験が対象)では、専門職の監督下で行う運動のほうが、継続率が高い傾向にあることが報告されています。また、ある研究では、自宅で行うよう指導された運動を、後日正確に思い出して実演できた方は15%程度にとどまったとも報告されています。2025年に発表されたコクランレビューの二次解析でも、運動の継続度が高いほど、慢性腰痛の痛みや機能の改善と関連していたことが示されています。

「良い運動を知っている」だけでは、身体は変わりません。正しいフォームで、継続できる仕組みがあることが重要だと、私たちは考えています。

一般のピラティススタジオとの違いについて

一般的なピラティススタジオには、運動としての楽しさや、リフレッシュ、美容面での魅力など、それぞれの良さがあります。当院がこうしたスタジオより「優れている」とお伝えしたいわけではありません。

当院が大切にしているのは、

身体を評価したうえで、その方に合った運動を、理学療法士とともに安全に行っていただくこと

です。整形外科クリニックに併設しているからこそ、運動と医療とを無理なくつなげられる。それが、当院が考えるピラティスレッスンの一番の特徴です。

谷口整形外科リハビリクリニックの少人数制グループピラティスについて

当院では2026年8月より、クリニック2階にて、理学療法士監修の少人数制(定員4名)グループピラティスを試験的に開催しています。

  • 理学療法士が、姿勢・呼吸・体幹の使い方を丁寧に指導します
  • 定員4名の少人数制なので、ピラティスが初めての方も安心してご参加いただけます
  • 「筋肉を鍛える」だけでなく、「身体を動かすための力」を育てることを目指しています
  • 1回3,000円(当日現金でのお支払い)
  • ご予約はLINEから。開催日程・時間もLINEでご案内しています

なお、今後2026年12月には、クリニックに隣接する形で本格的なスタジオ(T-Link Studio)のオープンも予定しています。今回のグループレッスンは、その前段階として院内で行っている取り組みです。

▶ 少人数制グループピラティスの詳細・ご予約はこちら

少人数制グループピラティス | さいたま市大宮区の整形外科、リハビリテーション科 | 谷口整形外科リハビリクリニック

ご興味のある方は、ぜひ一度、体験してみてください。

まとめ:よくある質問(Q&A)

Q1. ピラティスをすれば、腰痛は治りますか?

A. 「治る」と断定することはできません。複数の研究で、慢性腰痛に対するピラティスの痛みや動作のしやすさへの改善が報告されていますが、他の適切な運動療法と比べて特別に優れているとまでは証明されていません。大切なのは運動を続けることそのものであり、ピラティスはその選択肢のひとつです。

Q2. 変形性膝関節症でも参加できますか?

A. 研究では、変形性膝関節症に対しても一定の効果(痛みや可動域の改善など)が報告されています。ただし、膝の状態によって避けたほうがよい動きもあるため、理学療法士が身体の状態を確認しながら内容を調整します。気になる症状がある方は、お申し込み前にご相談ください。

Q3. 運動が初めてでも大丈夫ですか?

A. はい、大丈夫です。少人数制のレッスンなので、理学療法士が一人ひとりの動きを見ながら丁寧に指導します。運動に自信がない方も安心してご参加ください。

Q4. 一般のピラティススタジオとは何が違うのですか?

A. どちらが優れているというものではありません。当院では、身体を評価したうえでその方に合った運動を提供すること、整形外科クリニックに併設していることで医療と連携できることを大切にしています。

Q5. 保険は使えますか?

A. いいえ、使えません。本レッスンは健康増進・予防を目的とした自費サービスであり、保険診療のリハビリテーションとは異なります。

Q6. どうやって予約すればよいですか?

A. LINEからご予約いただけます。開催日程や時間もLINEでご案内していますので、詳細ページをご確認ください。

文責:谷口整形外科リハビリクリニック 院長 谷口真史

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