骨粗鬆症は「骨折してから」では遅い?骨密度を測るべき人と検査のタイミングを整形外科医が解説
2026.08.30
骨粗鬆症、「まだ大丈夫」と思っていませんか?
骨折する前に、一度だけ自分の骨を知っておきましょう
「骨粗鬆症は高齢者の病気でしょう?」
「痛いところもないし、私はまだ大丈夫」
そう思っている方は少なくないかもしれません。
ところが、骨粗鬆症の難しいところは、骨が弱くなっていても自覚症状がないことが多いことです。
高血圧が血圧を測らなければ分からないように、骨も外から見ただけでは、その丈夫さは分かりません。
そして骨粗鬆症では、
「痛くなったら調べよう」
ではなく、
「骨折する前に、自分の骨の状態を知っておく」
ことがとても大切です。
厚生労働省も、骨粗鬆症検診について「無症状の段階で骨粗鬆症やその予備群を発見し、早期に介入する」ことを重要な目的としています。

まず、3つだけチェックしてみてください
次のうち、当てはまるものはありませんか?
□ 閉経している
□ 以前より身長が低くなった、背中が丸くなった気がする
□ 50歳以降に、転倒など比較的軽いきっかけで骨折したことがある
ひとつでも当てはまる方は、この記事を少しだけ読み進めてみてください。
特に女性では、閉経に伴う女性ホルモン(エストロゲン)の減少によって骨量が低下しやすくなります。厚生労働省の資料でも、閉経後のエストロゲン低下と骨量減少の関係が示されています。
ご自身の「骨密度」を知っていますか?
血圧について聞かれれば、
「だいたい120くらいです」
「少し高めと言われています」
と答えられる方は多いと思います。
では、
「あなたの骨密度は何%ですか?」
と聞かれたらどうでしょうか。
答えられない方のほうが多いのではないでしょうか。
それは当然です。
骨は、血圧のように自宅で簡単に測ることができません。
そして骨密度が低下しても、多くの場合は自覚症状がありません。
そのため、
「骨粗鬆症になっているか?」と心配する前に、
まず「自分の骨密度を知っているか?」と考えてみてください。
70歳では、約3人に1人が「要精検」
「でも、実際に骨が弱くなっている人なんて、それほど多くないでしょう?」
と思われるかもしれません。
しかし、骨量低下は決して珍しいことではありません。
厚生労働省が行っている地域保健・健康増進事業では、自治体の骨粗鬆症検診についても集計されています。2024年度にも全国で骨粗鬆症検診が行われています。
年齢が高くなるにつれて「要精検」と判定される割合は増え、70歳女性ではおよそ3人に1人が精密検査を勧められる水準となっています。
ここで大切なのは、
「要精検=骨粗鬆症」という意味ではありません。
自治体の骨粗鬆症検診は、骨量が低下している可能性のある方を見つけるための『スクリーニング(ふるい分け)』です。
「一度きちんと調べてみた方がよいですよ」
というサインだと考えてください。
それでも、骨粗鬆症検診を受ける人は約6%です
では、日本ではどのくらいの方が骨粗鬆症検診を受けているのでしょうか。
2024年度の骨粗鬆症検診受診率は『5.9%』です。
つまり、対象となる女性の中でも、検診を受けているのはまだごく一部です。
このため国の「健康日本21(第三次)」では、骨粗鬆症検診受診率を『2032年度までに15%』へ引き上げることが目標とされています。
なぜ、これほど受診率が低いのでしょうか。
骨粗鬆症を知らないから、だけではないでしょう。
おそらく多くの方が、
「今は困っていないから、また今度でいいかな」
と思っているのではないでしょうか。
「そのうち測ろう」は、なかなか来ません
人間は、今すぐ困っていないことを後回しにする傾向があります。
「健康診断を予約しないと」
「歯科検診に行かないと」
と思いながら、数か月経ってしまった経験はないでしょうか。
これは行動科学では、『現在の状態をそのまま続けやすい「現状維持バイアス」や、将来の利益よりも目の前の負担を大きく感じる「現在バイアス」」などで説明されます。
骨密度を測ったからといって、薬を飲むわけではありません
骨密度測定を勧めると、
「検査をしたら、そのまま薬を飲むことになるのでは?」
と心配される方もいらっしゃいます。
しかし、
骨密度を測ることと、薬を始めることは別です。
まず現在の骨の状態と、将来骨折するリスクを確認します。
骨密度が十分であれば、現在の生活を続けながら経過をみることもあります。
少し低下していれば、食事や運動、転倒予防などについて考えます。
そして、骨粗鬆症と診断されたり、骨折リスクが高いと判断された場合には、必要に応じて薬物治療を検討します。
「検査を受ける=すぐ薬」ではありません。
まず自分の骨の現在地を知り、その結果を見て次を考えればよいのです。
骨粗鬆症は「骨密度」だけで診断する病気ではありません
骨粗鬆症というと、
「骨密度が何%なら骨粗鬆症なの?」
と思われるでしょう。
日本では、脆弱性骨折がない場合には、原則として腰椎または大腿骨近位部の骨密度がYAM(若年成人平均値)の70%以下、またはT-score −2.5以下であることが、原発性骨粗鬆症を診断する基準のひとつとなっています。
しかし、診断は骨密度だけでは決まりません。
例えば、
- 椎体の脆弱性骨折
- 大腿骨近位部の脆弱性骨折
があれば、骨密度が70%以下でなくても骨粗鬆症と診断されることがあります。
また、その他の脆弱性骨折があり、骨密度がYAM 80%未満の場合も診断基準に該当します。
つまり、
「骨密度」と「これまでの骨折歴」の両方が重要
なのです。
「転んだだけで骨折した」は大切なサインです
特に見逃してほしくないのが、
比較的軽い力で起こった骨折です。
例えば、
「立った状態から転んで骨折した」
「尻もちをついただけなのに背骨を骨折した」
といった骨折を脆弱性骨折と呼びます。
こうした骨折が起きた場合には、「運が悪かった」で終わらせず、背景に骨粗鬆症がないかを調べることが大切です。
特に椎体骨折や大腿骨近位部骨折は、骨粗鬆症を考えるうえで重要な骨折です。
「身長が縮んだ」も、骨からのサインかもしれません
もう一つ気にしてほしいのが、
身長の低下や背中の丸まりです。
年齢とともに姿勢が変化することはありますが、その中に、本人が気づいていない椎体骨折が隠れている場合があります。
椎体骨折は、必ずしも強い腰痛を伴うとは限りません。
「最近、昔より身長が縮んだ」
「背中が丸くなってきた」
という方は、一度骨粗鬆症について相談するきっかけにしてよいと思います。
骨密度はどのように測るのでしょうか?
医療機関で骨粗鬆症を評価する際に中心となる検査が、
DXA(デキサ)法
です。
2種類のX線を使い、骨に含まれるミネラル量から骨密度を測定します。
骨粗鬆症の診断では、腰椎と大腿骨近位部の骨密度を測定することが基本となります。
検査そのものに痛みはありません。
一般的なレントゲン写真でも著しい骨量低下が分かることはありますが、通常のレントゲンは骨密度を正確に数値化する検査ではありません。
自治体の「骨粗鬆症検診」と病院のDXA検査は少し違います
ここは少しややこしいので、整理しておきましょう。
自治体が行う骨粗鬆症検診は、
40歳・45歳・50歳・55歳・60歳・65歳・70歳の女性
が対象です。
検診で使用される測定方法はDXAだけではなく、
- DXA法
- 超音波法
- その他の骨量測定法
など、自治体によって異なります。
これは、骨量が低下している可能性のある方を見つけるための検診です。
一方、医療機関で骨粗鬆症の診断や治療方針を検討する場合には、腰椎や大腿骨近位部のDXAによる骨密度測定が重要になります。
「検診」と「精密な診断」は同じではありません。
自治体検診で「要精検」と言われた方は、そのままにせず医療機関を受診してください。
特に、一度相談していただきたい方
次のような方は、骨密度測定や骨折リスクについて一度医療機関に相談してみてください。
- 65歳以上の女性
- 閉経後で、骨粗鬆症の危険因子がある方
- 50歳以降に、比較的軽い外力で骨折したことがある方
- 以前より身長が低くなった方
- 背中が丸くなってきた方
- ご両親に大腿骨近位部骨折の既往がある方
- やせている方
- 喫煙習慣がある方
- 飲酒量が多い方
- ステロイド薬を長期間使用している方
- 関節リウマチなど、骨粗鬆症のリスクとなる病気がある方
骨折リスクは骨密度だけでは決まりません。
年齢、骨折歴、家族歴、喫煙、飲酒、ステロイド使用、関節リウマチなども重要な要素です。こうした項目を使って10年間の骨折確率を推定する『FRAX®』という評価方法もあります。
40・45・50・55・60・65・70歳の女性へ
もし今年、
40歳・45歳・50歳・55歳・60歳・65歳・70歳
になる女性であれば、一度、お住まいの自治体のホームページを確認してみてください。
健康増進法に基づく骨粗鬆症検診の対象年齢です。
自治体によって実施方法や自己負担額などは異なります。
「自治体から案内が届いていたけれど、どこかへしまってしまった」
という方もいらっしゃるかもしれません。
この記事を読んだついでに、一度だけ確認してみてください。
この記事を閉じる前に、ひとつだけ決めてください
ここまで読んで、
「骨粗鬆症については分かった」
で終わってしまうと、おそらく骨密度は測らないままです。
ですから最後に、3つだけ選択肢を用意します。
今日やることは、どれかひとつで十分です。
① 自分が自治体の骨粗鬆症検診の対象年齢か確認する
② 次に整形外科を受診したときに、
「私は骨密度を測った方がいいですか?」と聞く
③ 閉経後で骨密度を測ったことがない、あるいは骨折歴など気になることがあれば、一度医療機関へ相談する
全部やる必要はありません。
ひとつだけで構いません。
骨粗鬆症は、
「骨折してから見つける病気」ではなく、
「骨折する前に見つけたい病気」
です。
よくあるご質問
Q. 骨粗鬆症は何歳から注意した方がよいですか?
女性では閉経後に骨密度が低下しやすくなります。特に65歳以上の女性や、閉経後で骨折リスクのある方では、骨密度の評価が重要です。また、自治体の骨粗鬆症検診は40・45・50・55・60・65・70歳の女性が対象です。
Q. 骨粗鬆症は痛みがなくてもなっていることがありますか?
はい。骨密度が低下しているだけでは、自覚症状がないことが多くあります。骨折が起きて初めて骨粗鬆症が見つかることもあるため、症状がない段階で骨の状態を知ることが大切です。
Q. 骨密度はどこで測れますか?
整形外科などの医療機関で測定できます。骨粗鬆症の診断では、腰椎や大腿骨近位部を測定するDXA法が標準的な検査です。
Q. 骨密度が何%なら骨粗鬆症ですか?
脆弱性骨折がない場合、原則として骨密度がYAM(若年成人平均値)の70%以下、またはT-score −2.5以下が骨粗鬆症の診断基準のひとつです。ただし、骨折歴によっては骨密度が70%を超えていても骨粗鬆症と診断されることがあります。
Q. 骨密度が低いと、すぐ薬を飲まなければいけませんか?
必ずしもそうではありません。骨密度だけでなく、骨折歴や年齢、その他の骨折リスクなどを踏まえて、治療の必要性を判断します。
Q. 踵で測る骨密度検査とDXAは同じですか?
同じではありません。踵の超音波検査などは骨量低下を見つけるスクリーニングに使われます。一方、骨粗鬆症の診断や治療方針の判断には、腰椎や大腿骨近位部を測るDXAが重要です。
Q. 身長が縮んだら骨粗鬆症の可能性がありますか?
身長低下や背中の丸まりは、椎体骨折が隠れているサインのことがあります。特に以前より明らかに身長が低くなった場合には、一度整形外科で相談するとよいでしょう。
Q. 一度骨折したら骨密度を測った方がよいですか?
特に50歳以降に、立った高さからの転倒など比較的軽い外力で骨折した場合には、骨粗鬆症が背景にないか評価することが重要です。
Q. 骨粗鬆症検診は誰が受けられますか?
健康増進法に基づく自治体の骨粗鬆症検診は、40・45・50・55・60・65・70歳の女性が対象です。実施方法や費用は自治体によって異なります。
Q. 骨粗鬆症は予防できますか?
骨粗鬆症や骨折の予防には、適切な栄養、運動、禁煙、過度の飲酒を避けること、転倒予防などが重要です。骨折リスクが高い場合には、薬物治療も骨折予防に重要な役割を果たします。
当院の骨粗鬆症診療 | さいたま市大宮区の整形外科、リハビリテーション科 | 谷口整形外科リハビリクリニック
文責:谷口整形外科リハビリクリニック 院長 谷口真史
